コンビニエンスストアで手に入るさまざまなお弁当は、その多様な種類と魅力的な見た目から、多くの人々に愛されています。しかし、これらのお弁当には食品添加物が含まれており、加工された商品として流通しています。販売されずに残った商品や、賞味期限が過ぎてしまった商品は、残念ながら廃棄されることになってしまいます。このような現象は、最近注目を集めるフードロス問題の一因として広く認識されています。
では、具体的に食品添加物はどのような目的で使用されているのでしょうか。その主な目的としては、「食品の風味を向上させる」「色や見た目を美しくする」「保存期間を延ばして長持ちさせる」「栄養成分を追加して栄養価を高める」などが挙げられます。
食品添加物は、私たちの健康に対してどのような影響を与えるのでしょうか。ここから詳しく掘り下げて考えていきましょう。
食品添加物は年々増加傾向に
最近の研究によると、ヒトを対象にしたランダム化プラセボ対照臨床試験と、マウスを用いた動物実験のデータを統合した結果が示され、詳細は科学誌「Science Translational Medicine」のオンライン版に発表されています。
この研究によれば、加工食品に含まれるプロピオン酸を長期間にわたり大量に摂取すると、代謝に異常が生じ、体重の増加やインスリン抵抗性の発生が引き起こされる可能性があることが示されています。
手軽に購入できる加工食品や調理済み食品への需要は年々高まっており、製造コストを抑えるためや消費期限を延ばすために、多様な添加物が使用されるようになっています。最近では、添加物をできるだけ使用しない方向への動きも出てきていますが、安価で多様な食品が消費者に好まれるため、食品添加物の使用は依然として増加しているという傾向があります。
2型糖尿病と肥満の急増
世界中で糖尿病の有病率を示す指標によると、現在4億人以上がこの病気の影響を受けています。過去50年間で2型糖尿病と肥満は急激に増加しており、その背景には環境要因や食事スタイルの変化が関与していると考えられています。各国は糖尿病を予防するために様々な取り組みを行っていますが、2040年までには糖尿病の有病率が40%も増加するという予測がされています。
2型糖尿病とは、高脂肪食の過剰摂取や運動不足などの生活習慣の乱れが原因となり、肝臓や筋肉に脂肪が蓄積し、インスリンの効果が低下してしまうことで、ブドウ糖の利用が不十分になり、結果的に血液中のブドウ糖が過剰になり血糖値が上昇することによって発症します。
「肥満と2型糖尿病という二重の流行に対処するためには、食品成分が分子レベルおよび細胞レベルでどのように体の代謝に影響を与えるかを明らかにする必要があります。これにより、簡単かつ効果的な対策を開発できる可能性がある」と、ハーバード公衆衛生大学院のギョクハンホタミシュジョ教授(遺伝代謝学)は述べています。
プロピオン酸が血糖値を上昇させるホルモン分泌を増加させる
研究チームは、食品の調理や保存に用いられる添加物が原因の一因であると考え、それらの分子を特定するための研究を実施しました。その結果、保存料として広く加工食品に使用されているプロピオン酸に焦点を当てました。プロピオン酸は、食品にカビが生えるのを防ぐ働きがあることが確認されています。
マウスにプロピオン酸を投与したところ、交感神経系が急速に活性化し、グルカゴンやノルエピネフリン、さらには新たに発見された糖新生ホルモンである脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)のレベルが急激に増加することが確認されました。これにより、肝臓の細胞からより多くのブドウ糖が生成され、高血糖という糖尿病の主要な症状が引き起こされることが明らかになりました。
さらに、研究チームは、一般的に人間が摂取するのと同程度の量のプロピオン酸をマウスに持続的に与えた場合でも、有意な体重の増加とインスリン抵抗性が見られることを発見しました。
ヒト対象に臨床試験も実施 同様のホルモン効果が確認される
ヒトへの影響を調査するために、14名の健康な参加者を対象に二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が実施されました。
参加者は無作為に2つのグループに分けられ、一方のグループには1gのプロピオン酸塩を含む食事を与え、もう一方のグループにはプラセボを含む食事が提供されました。食事の前後15分以内、さらに30分ごとに4時間にわたり血液サンプルを採取し、プロピオン酸摂取の影響を調査した結果、マウスと同様のホルモン効果が確認されました。
プロピオン酸を含む食事を摂取したグループでは、食後すぐにノルエピネフリン、グルカゴン、FABP4のレベルが有意に上昇することが明らかになりました。これは、プロピオン酸が潜在的にヒトの糖尿病および肥満のリスクを高める「代謝をかく乱する物質(metabolic disruptor)」として機能している可能性が示唆されています。
まとめ
プロピオン酸は、米国食品医薬品局(FDA)によって安全な添加物として認められています。しかし、今回の研究は、食品に使用されるプロピオン酸に関して新たな調査が必要であり、潜在的には代替品を探す必要があることを示唆しています。
「過去50年間で肥満と2型糖尿病が劇的に増加しました。これには環境や食事の要因が影響しており、加工食品に含まれる添加物も重要な要素として挙げられます。今回の研究結果は、この問題に対する新しい可能性を示す強力なエビデンスとなるでしょう」と、筆頭研究者でありイスラエルのテルアビブ大学の准教授でもあるアミール・チロシュ氏はコメントしています。